1. ダミーホイルを使用する目的とは
長年、ダミーホイルは車輪荷重を測定するために用いられてきました。また、その測定のためのアライメント整列等の確認作業にも必要不可欠なものでした。
トー、キャンバー、キャスターが変われば、車高が変わり、輪荷重に影響します。
スプリング、スタビライザーなどの反力は、左右差を生じ、こちらも輪荷重に影響します。
このようにコーナーウエイト(輪荷重)は、車高のバラツキだけでなく、複合要因を検査、確認するため必須作業であり、左右のタイヤの角度、左右差(相対値)の確認を同時に行うことが必要でした。
これまで、上記の環境はフォーミュラカーを始め、トップカテゴリーで用いられる高価な機材でしたが、ダミーホイルが普及し、チューニングショップなどでも用いられるようになってきました。
2. 市販車にダミーホイルは必要か? その1
近年は市販車を改造したワンメイクレースが盛んになり、また縦溝を有した繊細なタイヤのマネージメントが求められるようになりました。
ワンメイクレースは、接触などでホイルの曲がりが多く、ホイルリム接点式では、常に新品ホイルを1セット用意する必要があり、ダミーホイルを用いるケースが増えています。
1の目的と少し異なりますが、アライメント調整の誤計測をしないためのダミーホイル活用と言えます。
3. ハブ直付けでないダミーホイルは有効か?
ホイルナットなどを介し、タイヤ、ホイルとは異なるプレートを仮想ダミーホイルとして取り付けることもあります。
レースゲージではプロです。
この場合、タイヤを取り外す必要がなく、装着が簡単というメリットはありますが、仮想ホイルの信頼性を確認する作業が加わります。
タイヤを浮かし、仮想ホイルを回転させ、振れ値を測定結果に補正値として代入する必要があります。
この振れ値を計測しない場合、測定結果に担保出来るものがなくなってしまいます。
ハブボルトへ共締めの場合は、締め付けトルク管理、座面精度の管理が加わります。
アライメント測定は、大凡の計測と、再現性が高い絶対値計測に分別され、大凡の測定を用いる場面もありますが、適度に基準値を確認しなければ、迷走してしまいます。
ノギスやダイヤルゲージのゼロ点確認、シリンダゲージの最小値読み取りと同じ考え方のようなものです。
4. 市販車にダミーホイルは必要か? その2
市販車には、ボディシャシと、サスペンションシャシの関係があります。
サスペンションの取り付け部がボディと一体の場合、ボディ精度の影響を受け、別体の場合は、ボディとサスペンションメンバーの位相ズレの影響を受けます。
それほど精密に考える必要性があるのか?という疑問もあるかもしれませんが、サスペンションとボディ剛性には密接な関係があり、車両開発者の書物などでも語られている程、ボディ剛性は車の運動性能に大きな影響を及ぼします。
近年の車はボディ剛性が上がり、繊細なアライメント調整をドライバーが感じ取れるようになってきました。
そこで忘れてはいけないのが、市販車ゆえの精度です。外見の車体、サスペンション取付部のシャシ、サスペンションメンバーの取付位置、このように車体の個体差等により、セットバック、オフセットが生じています。
最新の車両でもこの数値は、個体差がそれなりにあります。
ダミーホイルを用いるカテゴリーがトップカテゴリーの場合、シンメトリー、すなわち左右対称を基本とした設計、組み立てが行われます。
市販車の場合、ロボットなどオートメーションによって組み立てられたボディは、先のマシンと比べて精度は変わります。
そして、アライメントの原則、オフセット方向のズレは、水糸による整列確認だけでは、分析が難しい点です。
整列上は綺麗な数値でも、オフセットが発生していた場合、どうなるか、想像が出来ます。
空力マシンの場合も、ボディの進行方向とタイヤの進行方向のズレは、本来の性能が発揮出来なくなる危険性があります。
このように一般のダミーホイルを用いるだけでは、計測が難しい点があり、車体とシャシ、サスペンションの関係性が市販車には隠れています。
5. 誤計測を招く理由 その1
ダミーホイル、レベル定盤、コーナーウエイトなど、サーキットではよく見かける風景です。
サーキット場のピットは、コンクリート土間が多く、レベル精度が高いところもあります。
しかしながら、そのようなピットでさえ、レベル定盤のアジャスターの高さが揃っていないことをよく見かけます。
このような状態で、定盤上の車のアライメントを、地面に置いたトーインゲージなどで計測してはいけません。
車の水平軸と、測定器の水平軸が異なるため、キャンバーがついた車の場合、トー方向の計測に、キャンバー方向の角度が介入してしまい、正しい測定が行えません。
6. 誤計測を招く理由 その2
市販車はサスペンションストロークが長く、また設計上の車高とは異なった環境で使用されます。
このため、ストロークにおけるアライメント変化が大きく、ジャッキアップから接地する過程で、車両ハブ位置が前後方向へ動きます。
このような場合、ダミーホイルに取り付けられたローラが、トレッド方向へのスライド機構のみだった場合、最悪、引っ掛かり、正常な計測が出来なくなる場合があります。
また、市販車のアライメント調整は、ロットエンドのネジ式だけでなく、カム式が多く、ロックボルトを緩める際に、車両が動き、脱落などの危険が生じます。
レースゲージは、安全性と、誤測定を排除するためにターニングラジアスゲージを用いることを前提としています。
7. レースゲージのアライメントホイールとは
レースゲージのアライメントホイールは、コーナーウエイトやアライメント整列に使用するダミーホイルの機能と、車両と測定器の水平軸を一致させる機能を合わせ、高い再現性を有しています。
(意匠登録ならびに特許出願機構)
ブッシュ構造のアライメントの再現性に疑問を持っていたメカニックが実際に使用したところ、再現性を高さに驚いています。
また、整列だけでなく、正確なトー測定、ストローク変化によるアライメント変化、ステアリング操作によるアライメント変化、メンバーオフセット、シャシ診断まで行える機能を有し、
クラッシュからの現地復旧、修復歴車の診断、ポータブル性は、高価な3 Dアライメントテスターに出来ない機能です。
価格帯としても導入効果が高く、アライメント収益に対する費用対効果も高くなります。
8. アライメント調整にタイヤの取り外しはつきもの
簡単に計測、瞬時に数値化、ドライブオンで、ランナウト補正がついたアライメントテスターに魅力を感じるのは当然のことです。
しかし、大衆乗用車であれば、アライメント調整機構が少なく、活躍の場は限られてしまいます。
もしサスペンションを交換している車の場合、キャンバー角、トー角だけでなく、車高のバラツキまで、調整項目が増えていきます。
ドライブオンのメリットは、出荷検査、微調整の場合などです。
本格的な調整を必要とする場合、タイヤ取り外しと取付け、ランナウト補正を調整ごとに繰り返す必要があり、予想以上に時間を費やしてしまいます。
また、この作業の過程で、正確に調整したいエンジニアには、測定の再現性が悩みになるかもしれません。
レースゲージプレミアムは、アライメントの荒出しから最終調整まで使用することでき、タイヤ脱着、ランナウト補正を必要としません。
この意味は、経験した方には分かりますが、作業がスピーディーに終わり、生産性が上がり、時間単価、すなわち、収益率が向上します。
モータースポーツの現場から、民間の整備工場まで幅広く活躍することを目的にレースゲージは誕生しています。
皆さんの悩みを解決する測定器。
それが、レースゲージのコンセプトです。